古びた海馬(懐古主義者の歌)
古びた海馬(懐古主義者の歌) 文豪の吸う金鵠の煙。 平成が石畳を闊歩する中 この肉だけが昭和である。 踏んだ跡には赤錆がつき 指の跡には蔦が這う 未来を盲いた色盲は 現在を失っていくのだ。 歯車ばかりを見つめている。 色とりどりのネオンサイン ...
幼子の歌
幼子の歌 掌でぬめるワインの様相 五寸に満たぬ、爪のない 幼子の手しわの黒い刺青 幼子は言う 「これで人を愛せるわ」 人殺しとなった幼子は 聖女の笑みでしなやかに 暖炉の火は卵を汚泥にする フライパンは触れぬほどに熱い 緑の髪は端が焼き切れて ...